2017年10月13日金曜日

山の報告です その五十六




 第一夜。大きいテントからは若者の楽しげな声が漏れ聞こえる。
「オリーブオイルを大匙3杯か」
「わー、美味しそう!」
 あたしと山登りする人間は、美味しそう!なんて言葉とは全く無縁なのだ。思えば気の毒ではあるけど、登る事に全て集中するので(詰まり余裕が無い)致し方ない。
 持参の缶チューハイがやけに効く。粗末な夕食の後でジョニ黒をチビチビやる。山でやる為に飲まずに取って置いた物だ。うーん、慎ましいですなあ。
 急激に冷え込んで来た。セーターを着込んではいるが、夏用のペラペラなシェラフでは寒くてかなわない。ウトウトしたかどうかで零時になり、仕方なくウイスキーをガブッとやる。それで少しは寝たかもしれない。
 大きいテントの諸君が何やら用意を始めた。時計を見ると二時だ。眠れない侭横になっていたが、寒くて堪らなく起きる事にする。四時一寸と前だった。入口を開けると真ん中にずっしりオリオンが鎮座ましましていた。そして一面の星空だ。やったー、ド快晴だ!
 トイレへ向かうと丁度大きいテントの諸君がヘッドライトを点けて出発だ。テントを置いて下って行くので、多分焼岳だろう。
 五時半、サブザックを背に明るくなった登山道を歩き出した。セーターは脱いだので、網シャツとカッターだけだ。霜が凍っていたので明け方の気温は氷点下だったろう。歩き始めた時点でも氷点下という訳だ。
 ポツポツと登山者が見える。取り敢えず独標を目指す。記憶では直ぐ其処だったが、結構登らされる。地図上で一時間半なんだから当然だ。
 一寸と岩場っぽくなったら独標だった。写真は独標からの笠ヶ岳、朝日が丁度当たって来た。
 独標には先を行く女性と大声で話している男性(あたしと同世代かな)がいる。目の前には西穂へ続く岩稜が姿を現している。続きます。

0 件のコメント: