2017年10月16日月曜日

山の報告です その五十七




 独標の男性と挨拶を交わすが、口がこわばって思う様に話せない。寒いのに二枚しか着てなかったので冷え切ったのだ。
私「しゃきに行ってるのは奥さんれすか」
男性「娘二人なんです」
私「貴方は行かれないれしゅか」
男性「足首を痛めたので、待ってます」
私「そうりぇしゅか」
 成程、二人の女性が登って行く。独標の下りは、と見たら絶壁なんかじゃ無くて一安心。あの冬の日、濃霧でなければ問題無く行けたのだ。まあ、濃霧だったんだよねえ。
 さて、と気合を入れて下り、二つ程小さなピークを越えたら例の娘さん(と言っても三十歳位だけど)二人に追い付いた。苦労して下っていたので声を掛けた。気温が上がった為に口のこわばりは消えていので、エールを交わして抜いて行った。
 二人連れの若者が抜いて行く。其の後会う事も無かったから奥穂への縦走者だろう。あたしには無縁なルートです。昔の歌に、西穂から奥穂に行けば娘を嫁にやる、ってえのが有った。今は鎖を掛けて結構整備がされてる様だが、バリエーションには違い無い。
 ピラミッドピークに着くと西穂が聳え立って見える。険しそうだが、何とか行けるだろう。昔は難無く行ったのだし。昔の自分では無いのだが、何とかならあな。振り返ると独標が下に見える。

 
 岩を女性が降りて来た。下り易そうな方には×マークが有る。
女性「あっちが行き易いみたいですけど」
私「でもザラザラな様ですね」
女性「岩にするかザラザラにするか、悩ましい処ですね」
 結局彼女は×マークへ向かった。下りの時、あたしも×マークから下った。ザラッと滑ったら大事なので×がついているのだろう。
 其の先で数人下って来る登山者と擦れ違った。早出して西穂の帰りなのだ。続きます。

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