2017年9月2日土曜日

秋はシャム猫の様に その一




 二昔前、唐松の幕場(はかば、じゃなくまくばです)(今は使わない言葉ですなあ)で朝、氷が張って居るのに驚いた。九月の頭だった。紅葉も始まってるかどうかの時なのだ。そうか、九月ともなれば北アルプスはモロ秋なんだ、と感心した。
 丹沢では、其の頃に氷が張る事は無い。十月中旬ともなれば霜柱が立って、昼にはグチャグチャになるけど。併し、九月にならば、丹沢でも秋は間違い無く始まって居るのだ。
 実際は八月末から、“秋は シャム猫のように ひっそりと訪れ 気が付かなければ其の侭 何時までも何時までも じっとしていそうに……“
 詩人に許しも無く引用しちまったが、こんな愚ログだ、問題は無かろう。
 暑い暑いと登って居ても、ふと感じる風の爽やかさ。いつの間にか蒸す感じが消えている。うーん、心地良い風だなあ。そして決定打は、あれ、カマドが色付いてる。
 カマドとはナナカマドの事と、断るのも野暮だろう。青々とした木々の中に、カマドだけが赤くなって居る。あ、秋が来たんだ!
 其の頃は、麓近くでは日暮(ひぐらし)の蝉時雨(せみしぐれ。知ってるって? 失礼!)、カナカナカナ、と煩い位だ。そして勿論未だ暑い。暑い中で蝉時雨を浴びて居るのが、秋の訪れなのだ。
 九月になれば、朝晩は冷える。八月でも朝晩は息が白くなるが、それよっか一段と冷える。テント生活なら、「おー寒い」と思わず呟く水準である。夏用シェラフでは、寒くてあかんわとなる可能性大だ。
 ま、アルプスじゃあ氷が張るんだけどね。これは仕方無いさ、標高が半分なんだから。北極なら一年中氷の世界だあね。
 十月ともなれば、稜線の木々が色付き始める。幾ら鈍い私でも、嫌でも秋だと思わされる。未だススキは開かない。開く年も有るかも知れないけど。

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