2017年9月16日土曜日

秋はシャム猫の様に その三



 渓谷はもっと遅く、十月も末になるのが普通だ。大体渓谷ってえのは稜線には無い。標高が低いので当たり前ってこってす。
 紅葉には水がよく似合う。
 流れをバックにした紅葉も良い。流れを前にした紅葉も良い(似た様なもんか)。水に写る紅葉も良い。渓谷を彩る紅葉も良い。ま、水と紅葉(或いは黄葉)は相性がとても良いのです。
 大昔の秋の一日、余りの空の青さに学校へ行くのは止めて、ヤビツ峠を越えて札掛けへせっせと歩いた。其の日は下駄では無く、ズックだった。勿論手には鞄で有る。教科書やノートだから、邪魔だけど捨てる訳にはいかないのが、鬱陶しい。
 前述だが、私は殆ど学校に行かなかった。授業なんざ、何の為にもならないと思って居た訳だ。若さゆえですなあ。いや、今でもそう思うから、そうなんでしょう、きっと。
 其の滅多に無い貴重な(自主)登校日を投げ捨てさせる程、空が澄み渡って居た訳だ。“あんまり空が青いので 涙や 夏つくった思い出を ポンポンと 投げてしまった……“
 又もや無断引用だ。ま、良いか。どうせ見てっこないって。見てなきゃ良いのかって?
良く無い。前言取り消し。絶海の孤島なので、此処は一つお目こぼしを。
 さて、札掛からは当然一ノ沢峠を越えて、物見峠を目指すのだ。今の地図では、一ノ沢峠を下ると直ぐに林道となって、物見峠へ至る。沢沿いの路は破線になった。やがて消え去ると言う事だ。
 ち、林道歩きかよ、あの気持ちの良い所をよ。大丈夫、話は大昔の事だ。林道の影も無い頃だ。原生林の一ノ沢峠を越えて川原歩きとなる。さっきの話、紅葉には水が良く似合う、其の状況なのだ。
 木々は色付き水は澄み、空は青く抜けて居る。そして漂う夕方の気配。其処をせっせと歩いて行く。何と贅沢な話。学校に行かないで本当に良かった!
 スタートが遅かったので、物見峠に着いた時は、本物の夕方が迫って居た。でも大丈夫、学生時代の事だ。一気に煤ヶ谷へ走り下りました。今なら? 途中で日が暮れる。

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