2017年6月3日土曜日

柄でも無い事 その六十二




 前章で苗場山の疲れが抜けず、高取山に空身で登って疲れが取れた、と書いた。
 其の後に12Kgを背負って又高取山へ行って来た。同じく好天で、爽やかな日だった。
頂上にはトレイルの諸君と同じ小さなリュックを背負った青年がいて。大山へ行く、と言
う。若さですなあ。
 此の日は土曜日だったので、どうせ千円払うなら梵天荘へ行こうかと、左に折れて向か
って行った。男性がハイク姿で向こうから来る。こっちから来る限りは梵天荘帰りだなと
思いつつ擦れ違う。
 フロントに登って行くと、電気はついているが誰もいない。何処かへ行ってるな、と二
十分程待ったが帰って来ない。まあいいや、勝手知った処だと風呂に入っちまった。出て
からフロントに降りて声を掛けた。
 女将が「済みませんでしたねえ」と相模弁で答え乍ら降りて来た。フロントには登るか
降りるかしなければ着けない。病院へ薬を取りに行って待たされたらしい。
女将「初めてのお客さんが来て良い風呂だって言ってくれて」
 矢張りあの男性だ。其の客が帰って直ぐに出掛けたと言うから、擦れ違いだった訳だ。
女将「待たして悪かったから、一寸と待って」
 女将は又上がって行き降りて来て五百円玉を差し出した。
女将「お待たせして、お互いの幸福の為にね」
私「では、遠慮なく頂きましょう」
 五百円で入浴した事になった。尤も、客を待たして申し訳ないと言う女将の気持ちを汲
めば、断る訳にはいかない。
 こんなたまにしか来ない奴に、そんなに気を遣って貰って却って恐縮だが、如何にも梵
天荘の女将らしい振る舞いである。
 初めての客との事だが、ネットで検索したのだろう。風呂は小さいが、大変気分の良い
風呂であり、宿でありますよ。

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