2015年9月12日土曜日

閑話 その百七十




 八月半ば、世に言うとこのお盆です。小さな沢にでも挑戦しようと、Yと幕営具を背負って一ノ沢に入ったと思いなさい。
 二度詰めてる小沢で堀山へ出る。其処でテントを張って夏の夜を過ごそうと言う訳だ。1000mは超しているので多分涼しいだろう。病み上がりにしては風流な企てである。
 Yと林道を一時間、沢の入口で小休止。今迄は其の侭沢に入ったが、一休みしないと続かない。うーん、此の先を暗示している。
 鉄管の手前迄行って仕舞い、登った小滝を下って戻る。忘れてるもんなんだなあ。
 林道に這い上がるのに一苦労。え、こんなに苦労したかよ、と驚く程だ。理由は簡単で、脚力も心肺機能も落ちている為、グッグと登れずザラザラともがくからだ。
 Yも私の援護がない為重い荷物なので、同じ状態となる。従って二人ともヒーヒー冷や冷や、やっと林道に立った訳だ。
 沢に戻ると直ぐ二分するが、入った事の無い左股に入って見る。何と無く行って見たかったのだ。
 小さい滝が結構有る。倒木を立て掛け足場にして越えたのは面白かった。ホールドが無い所を肘迄使って這い登り、サブザイルでYを引き上げたのが一ヶ所。
 どーんと10mの滝が現れた。話には聞いていた。「一ノ沢には大きい滝が有るぞ」。此れのこったろう。登れないのは一目瞭然。左右を見ても逃げ場は無い。
 今登った小滝を二つ、尻で滑る様にして降りて左に逃げる。又もや力が足らないのでヒ
ーヒー冷や冷や。ヒーヒーは分かるが冷や冷やは分からないって?
 説明しよう。ザラザラな急斜面は足元が崩れる前に次の足が出て居る必要が有る。ぼやぼやしていると崩れて滑り落ちる。もし滑り落ちたら、無事でいられたなら目出度いと言う渡世なのだ。(続)

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