2015年3月9日月曜日

閑話 その百四十五




 写真は秋の爺ヶ岳中腹で、文章とは無関係で、済みません。
 さて、雪の爺ヶ岳直下の朝が来た。相変わらずの吹き降りで有る。二日停滞は余りにきつい。酒は有るが、気がおかしくなるだろう。
 下山するしかないと覚悟はしたが、此の侭スゴスゴと下るのは残念だったらしい。テントが留守中飛ばされると困るので、荷造りしてから頂上へ向かおうとした、と有る。
 いやあ、若かったんだ。今ならさっさと下って、麓の温泉にでも入る処だ。吹き降りの中、何が悲しくてピークへなんぞ向うんだ?
 ザックを造り終えてアイゼンを着けて居たら、下のテントの若者がやって来た様だ。
若者「登られるんですか?」
私「頂上迄行ってみようと思って。何も見えないけど」
若者「風は大丈夫でしょうか」
私「まあ、大丈夫でしょう」
 そんなやり取りが有ったものと思われる。若者の気持ちは良く分かる。不安な夜を過ごして迎えた朝も悪天候。どうしよう。
 あれ、上のテントのおじさんがどうやら頂上を目指すらしい。じゃあ俺も行けるのかな?よし、急いで準備しなくちゃ!
 あたしも若い頃はそうだった。外のパーティが動き出すと不安は吹き飛び、俺も行こうとなるのだ。一人っきりなら其の勇気が出ないものなのだ。
 結局若者は、遅れて頂上について来た。頂上に近づくにつれ、風に寄り掛かり、フードは千切れんばかり、と有るので、相当吹かれた訳だ。
 勿論頂上では写真一枚撮るでもなく、早々に下山に掛かったのだが、一応ピークは踏んだぜ、との満足感は有ったと言う事だ。今との違いは余りに大きい。忸怩。。。。。。
 たった二十年で人は此処迄だらしなくなれると言う事です。ま、そんなもんでしょう。

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