2014年9月17日水曜日

閑話 その百三十七




 その百三十六の通り、あたしの心配は無くなった。目出度い! だけどYの心配が残って居る。彼は、やっとの事で塔に辿り着いた。
 此の間のお盆に、幕営具を担いで大室山へ向かった。小雨の降る日で、そうは暑くなかったが蒸す。凄く蒸す。だに依ってYは大汗をかいた。そして歩みがやけに遅くなった。
私「Y、大丈夫か?」
Y「つった」
私「え、何処」
Y「大腿四頭筋」
 手持ちに、梅干しの種を抜いて塩を振ったつり避けが有ったので、一つあげる。
Y「こりゃあ美味い!」
 併し手遅れだった。暫くは登ったが、遅々たる歩みになった。脹脛と太腿の裏もつったと言う。限界と判断、平たい所で幕営した。
 テントの中でも、Yは彼方此方つって、取るべき姿勢に苦しんで居た。此れがYにはショックだった様だ。大室山の中腹迄しか行けなかった訳だから。
 あたしが現役時代は、Yをしょっちゅう山へ連れ込んだ。シルバーで働く様になったら土日が忙しくなって、Yを山に誘う機会も極めて少なくなった。
 最近の春山も、のんびり山行になった。詰まり、Yは此処数年、碌にキツイ山歩きをして居なかったのだ。しかも回数もぐんと減ってなのだ。うーん、此れは弱って当然だ。
 Yは横になってはイテイテイテッとなり、向きを変えてはイテイテイテッとなり、正座をしてはフーッと息を吐いて居る。
私「此れじゃいけないなあ、どんどん山へ連れていくよ」
Y「そうだね」
 外はショボ降る雨で有る。つっては騒ぐYと宴会で有る。中々絵にはならない景色だ。
 登りに苦しんだYは、当然下りでも苦しむ事になる。気の毒だけど仕方が無い。で、塔のピストンへ連れて行ったのだ。続きます。

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