2024年3月21日木曜日

閑話 その四百四十五


  余りにも凄い遭難がユーチューブで取り上げられていた。去年の十二月末の話だ。登山歴二年、初の冬山単独との事だが、初冬山だったのでは思う。二十四歳の男性だ。

 天気が良いから八ヶ岳にした、と言う時点で何考えてるんだって事だ。天気が良いから穂高にしたって、あり得る訳だ。彼は難易度を全く考慮しない。その時点でダメである。

 八ヶ岳でも良い、天狗岳ピストン位から慣れて行くならだ。処が彼の計画は甲斐大泉駅で仮眠して、権現岳へ1300m以上を直登、赤岳、横岳、硫黄岳、天狗岳そして高見石小屋泊。歩行距離21,7Km、累積標高差登り3400m、下り2300m、夏道でも十六時間掛かるハードなコースだ。冬では当然もっともっと掛かる。彼は加藤文太郎か?冬山熟練者か? こんな計画を立てた時点でダメである。

 権現岳には登れた。予定より二時間遅れていたらしい。そこでこれはキツイと気付かなかったのか。権現岳と赤岳の間にキレットがあって、20mの「源治梯子」がある。彼はその梯子が凍り付いているのを見て、どう言う訳かその横を下り出した、アイゼンなしで!この時点で絶対ダメでしょう。上の写真は夏の 「源治梯子」です。

 言う迄もなく滑落、それでも奇跡的にブッシュと地形に救われて10m程で停止。有り得ない幸運である、垂直に近い岩場なのだから。

 そこから梯子下の登山道に戻るには凍結した急斜面を登るのだ。処が彼は軽アイゼンしか持っていなかった。その上ピッケルも持っていない! 十二本爪の出歯アイゼンとピッケルがあれば(使えれば)何とか登れただろう。軽アイゼンでピッケルなしではダメだ。

 結局携帯のSOSが届いて彼は無事救助されたのは目出度い。だが、残った食料はチョコバー一本のみ。ゼリー二個、チョコバー三本を持って入山したが殆ど食べてしまった訳だ。これっぽちの食料で入山した時点でダメである。

 丸で話にならないが、この様な登山者が増えなければ良いが。ユーチューブを真似するにはそれだけの経験が必要なんですがね。

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