2024年2月7日水曜日

休題 その五百九


  ボクシングのド素人且つ興味もないのあたしが、何故か井上尚弥だけは気に掛かる。休題でも難度か取り上げた。彼の凄いパンチとスピード、群を抜いた闘争センスに魅せられたのは勿論だが、試合ぶりが恰好良いのだ。それは何でだろうと思っていたが、タパレスに勝った後のフアン交流会の彼の発言を見て合点がいった。以下に記す。

フアン「神様が一つだけ願いを叶えてくれたら、何を願いますか」

尚弥「難しいですね。(間)何が欲しいかというか、トレーニングを続けて試合に出るのは強くなった姿を見せたいから。願ってそれがかなうなら簡単だが、それじゃ面白くない。汗水たらしてこその達成感、何か一つと言われたら断るかも知れないですね」

 面目躍如だ! ストイックの極地ではないか。普通、もっとスピードをとか、パワーをとか、絶対にパンチを貰わない能力とか、叶うんだから望むでしょうが。あたしだったら有り過ぎて(勿論ボクシングについてではない)、迷いに迷うよw

 井上尚弥氏は断る様子だ。自分が汗水たらしてこその達成感、そして自分の成長を観客に見て貰いたいとの趣旨なんだもんねえ、並の人間の心持を遥かに超越している。江戸時代に生まれていれば剣豪となっただろう。それも、”剣聖”と呼ばれる存在にだ。

 苦戦したドネアとの二度目の対決の時、第二ラウンドで左フックが入りドネアが大きくよろめいた。好機と見ると猛然と打って行くのが尚弥流だが、この時は一呼吸置いた。後で語るには「レフリーに止めて欲しかった、もう殴りたくなかった」。

 ドネアは一回目の対戦で尚弥に敗れた時、観客に丁寧に礼をして退場した。会場からはその後ろ姿にドネアコールが起きた。そういう相手だからこその思いだろう。

 花も実もある男の中の男井上尚弥氏です。

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