2022年4月3日日曜日

休題 その四百二十


  「博士の異常な愛情」はあたしの一押し映画の一つ(矛盾した言い方?)だが、博士繋がりで「博士と狂人」の話です。

 四年前の作品で、メル・ギブソンとショー・ペンが主役と言って良いだろう。オックスフォード英語大辞典編纂の実話を元にしている。日本には「船を編む」と言う作品があったが非常に地味で、あたしには好意の持てる一作だ。あ、「博士と狂人」には好意を持てないってんじゃないですよ。こっちはこっちの良さがあるんです。

 専門家でもないメル・ギブソンが難航する辞典編纂の任に着き、独特のアイデアで編纂に当たり、物凄く強力な協力者になるのが、殺人者で精神病院に監修されているショー・ペンと言う訳。

 二人共言語能力が異様に優れており、協力しつつ”A”の最初の部分が仕上がる。そして色々と問題が発生し、政治問題にまで発展するのだが、それには触れない。

 あたしが一番胸を打たれたのは”言葉”をとことん大切にする姿勢。語源から文章への引用まで調べなければ納得しない。あたしが様に吟味もしなけりゃ校正もせずにダラダラ書き流しているのとは偉い違いだ。天と地、提灯と釣り鐘ですなあ。

 ショー・ペンが半端なく巧い。段々主役のメル・ギブソンは食われて行ってしまう。従って二人の主演、と書いたのだ。二人共辞典の完成を見る事はない。七十年かかったのだ。編纂方針を定めたのが、メル・ギブソンだ。

 イギリスでは裁判もオックスフォード大辞典に依れば、と引用され判決が下る。信用度合いが桁外れである。トマトは果物か野菜かで争った変わった裁判の事だ。果物屋でトマトを売るのは違法だとか何とかだった。

 映画自体はそう楽しい出来ではない。是非お勧め、とはとてもじゃないが言えない。言葉の海に浮かんでみたいと言う、変わった方向けです。

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