2021年10月16日土曜日

山の報告です その百十一

 


 写真は奥穂です。下りのストックは有効だったが、急な所や梯子、鎖場では邪魔になる。左手首にぶら下げて降りるが、時々どっかに引っかかるのが面倒だ。

 五、六か所鎖場があるが、後ろ向きになって腕に体重を掛け、腕力で下る。脚に負担を掛けたくないと言うより、負担を掛けられないが正しい。何時脚がグネリとなるか分からないんだもん(涙)。

 あたしはもう穂高に来ちゃ駄目な部類なのだろう。脚がグネリとなったら滑落する世界だ。バランスも悪くなってるし、登るも下るも足元がおぼつかない。たっぷり自覚させられましたよ。

 三十代の夏、お盆だったのでこの路は登山者の行列だった。Nと下って来て、どんどん下る若者のパーティの後ろに着いた。そのパーティは速いので登山者の列は左右に路を避ける。紅海を割って行くモーセの様だ。

 そのうちそのパーティが横に避け、あたしが先頭になって下った。Nに止められる迄モーセ状態が続いた。あれは幻か。どうやってこの急な下りを走るが如くに下れたのだろう。しかも幕営具を背負って。若いと言うのは其処まで力強いものなのか。

 七十四歳直前の身には、無事に下る事が全てなの。見事に衰え果てたのだが、あたしの歳でここを走る様に下っている人がいれば、随分奇異なものだろう。年相応ってね。

 下に小屋が見えて来たが騙されてはいけない。未だ未だ下らされるのだ。身を乗り出せば頂上からだって見えていた筈だ。

 いやあたっぷり下った、と思う頃テントに着いた。取りあえずテントに入る。雨の名残もなく綺麗に乾いている。行動食を口に入れ、荷詰めし、テントを撤収する。その間にも登山者が降りて来て横を通る。

 これから疲れた脚に一頑張りして貰う。上高地へ下る。去年と同じですなあ。

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