2021年1月20日水曜日

閑話 その三百四十七

 


 昨日十九日、Yと塔へ登って来た。寒い日だったが快晴だ。Yは箱根蕎麦を食べて一本前のバスで行き、あたしが追うと言うパターンである。

 あたしの乗った八時四十分のバスに登山者は三人。え、こんなに良い天気なのにどうしたんだと驚く。歩き出して一人を抜くと後は誰もいない山。こんなに静かな馬鹿尾根は珍しい。見晴らし茶屋で中年夫婦が休んでいたのみ、多分一本前のバスだろう。もう擦れ違う人もない。

 吉沢平で荷揚げらしい男性を抜いた。塔には来なかったので、途中の小屋の荷物と思われる。そして大階段に掛かると、上によっこらと登るYの姿。「よもやよもや、大階段で追いつくとは」と後ろに着く。

 塔へはゆっくりと登り、一服後下りに掛かる。Yは七時四十五分、あたしは八時に歩き出したので十五分差だった訳だ。

 吉沢平の下りあたりからYのピッチがガクンと落ちた。膝のバネが効かなくなったと言う。前回は堀山の幕営地迄快調に下ったのに、今回は最早ダメになったのだ。

 それからはやっとの下りが続く。少ない登山者も、カタッパから我々を抜いて行く。Yは「皆さん速い、普通に歩いてる」なぞと情ない事を口走る。

 三叉路からのダラダラ道になっても歩度は上がる処か、遅くすらなる。本人は必死に歩いているのだが、バネがいかれてるのでね。

 大倉に三時十分、Yにしたら七時間二十五分掛けた訳だ。普通より二時間多い。バネったって膝に付いてる訳じゃない。大腿四頭筋の弱りって事だ。「塔が遠い山になったぞ。大 腿四頭筋を鍛えなくては、塔にも登れなくなっちまう」と言うと頷く。

 専業主夫になり、姑の面倒を見る日々なので足を使う機会もないのだろう。でも、実際問題として登山者Yの危機なのです。

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