2020年10月24日土曜日

山の報告です その百一


  ほぼ膝が笑った状況で岳沢への下りが始まった。両手がフル活動である。足に任せていられないのだから仕方ない。まあ、両手で下ってる様なもんですな。

 それでも緩んだ所は歩く。四つん這いで行くのも何でしょうが。すると中年男性が追い抜き乍ら「靴紐が緩んでます、大丈夫ですか」と問う。あたしはダラダラに緩んでも平気なので「大丈夫です」「この下りは事故が多いから気を付けて下さい」「有り難う御座います」。

 思えば、如何にもヨタヨタ頼りなく歩いて見えたのだろう。あいつ大丈夫か、と思わず声を掛けたのだろう。あたしがやりそうな事をやられちまった。其れ程あたしはダメに見えたのだろう。

 全くそうでした。次の緩んだ所で左膝が効かずに、左斜面の這い松帯に転げ落ちた。あっと言う間で訳が分からなかった。頭を下にして、仰向けに這い松に引っ掛かった。足を降ろして体制を整え、這いあがった。

 見て居た登山者が「逆じゃなくて良かったですね」と言う。あたしが落ちたのは55度の這い松斜面、逆側は80度位の岩崖だった。そっちに落ちたら唯々落下するのみ、多分終わりだっただろう。左右が命を分けたのだ。

 何度か中高年の遭難を取り上げたが、滑落死の多くはこんな感じで起きたものだろう。何も考える間もない出来事だ。

 外にも何人かが見ている。気恥ずかしいものである。膝が効かないで転落するなんて、見っとも無い事夥しい。人目を気にしてる場合じゃないのは分かってるんだけど、つい良いかっこしいの地が出ちまう。

 恰好を付ける場合ではない。慎重にも慎重を期して下るのみ。それでももう一度転んだ。登山道の上に転んだので大過なかったが、ダメだこりゃあである。

 見ると稜線が姿を現している。クッソー、景色も出たかも。上の写真がそれです。(続)

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