2020年9月13日日曜日

休題 その三百二十五

 

 塔に登って来た。その話は閑話でするとして、帰りの温泉の事。里湯に行くと未だ工事休業中、それならと梵天荘へ行った。玄関は開いていたのでやってるな、と声を掛けた。

 女将が降りて来て「初めて?」と聞くのは何時もの事だ。余り客を歓迎する風はない。「風呂に入りたい?」と言うので「入れれば」と答え、結局入浴した。

 階段を登って客室の前を通ると落ち葉が散らばっている。ははーん。泊り客も宴会も断っているな。風呂だけは沸かしているけど、旅館業はお休みって事だろう。

 帰りに声を掛けると女将が降りて来た。地下足袋を履き乍ら「仕事は休んでるの?」と聞くと「うちの?」「そう」「私の休みも取りたいしね」と言う。去年御主人を亡くしているのだから、極めて当然だ。

しかしこれじゃ梵天荘は潰れちまう。そこで「もうコロナは収まったと思うよ」と言うと「今日、丁度手伝ってくれる三人から電話があって、何時でも手伝ってくれると言うのよ」と言う。三人の代表からの電話だったのだろう。「二十年も手伝ってくれていて、とても良い人なの」。

 女将は足が悪いから、二十年も手伝いの人達と一緒にやって来たのか。その女性達から電話があったと言うのは、もう旅館を再開したら如何か、との打診であろう。

 余計なこったろうが、一言言わずにはいられなかった。「もう仕事を始めた方が良いよ」。何の根拠もなく言うもんである。でも、絶対旅館を再開すべき時だと思ったのだ。

 女将は嬉しそうに笑った、とあたしには見えた。そして「ありがとね」と微妙な相模弁で礼を言った。

 もう仕事は再開すべき時だ。GOTOキャンペーンに来月から東京も加わる。自粛で閉じ籠ってたり、怖がって竦んでいる必要は最早無い。“怯えを捨てよ街へ出よ”ですよ。

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