2020年5月27日水曜日

閑話番外 その百十三



 六年前の二月に「己との戦い」と言うラベルで、あたしは山では己とは戦わない理由を書いた。己と戦うなんてレベルじゃないって話で、情けないのです。
 六年の歳月は大きい。今や己と戦う局面に近い状況がたびたび出現する。と言っても偉く低水準な話なのだ。
七十二歳になったからだし、手術の後で死にかけて体力ががくっと落ちた事もある。詰まりザックを背負って登るって行為がひどくキツくなったって事だ。すると、歩を進める事自体が己との戦いになる。ね、ひどく水準の低い話でしょ? 書いてて嫌になるが、現実はそうなのだ。
 テントを背負っての縦走はもうダメだろうね。Yと二人なら共同装備(テント、火器、明かり、バーナー、ガス、コヘル、ロープ等)は一組で済むので何とかやれたのだが、去年の谷川岳小縦走でYがとことん参って、今後の縦走は諦めた。単独でのテントの縦走は此れ又限界だろうから、定着アタックか小屋泊まりしか選択肢はなくなったのです。
 小屋泊まりでもあたしは自炊派なので、荷物は10Kgを越える。小屋への登りで己との戦いを強いられる。ヒーヒーと頑張るってこってす。
 ダメだこんなんじゃ! 愚にも付かない年寄りの戯言(たわごと。読めるって?失礼!)じゃないか。
 とは言ってもそうなんですよお。最早登山者なんてもんじゃない。山をうろつく爺さんに過ぎない。それも一寸とうろついて直ぐにテントか小屋に入って酒を飲み始める。登山者失格以前に人間失格だ。少しは反省しろ、このできそこないが!
 と、怒っても無理なものは無理なのだ。ザック背負ってスタスタとは登れない。昔じゃないんですなあ。キスリングを背に、人を抜き乍ら稜線を行ったのは、夢かと疑います。

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