2020年3月7日土曜日

閑話 その三百十二



 若者、もしくは中年登山者にポツリポツリと抜かれて行く。青空だったのが雲っぽくなった。山は午前中が勝負ですなあ。
 難所(?)花立大階段もどうにか通過、塔の登りに取り付いたら「あ、つった」とY。やばい。「どこ?」「太腿の内側」。来たか、厄介な所だ。伸ばせない縮められない、唯痛みの去るのを待って、後は騙し乍ら行くしかない。Yは騙し騙しどうにか頂上に着いた。
 遠く蛭近辺に霧氷が見える。真昼間の霧氷は割と珍しい。そう寒くはないのにね。写真がその霧氷。え、分かんないって?拡大してよーっく見て下さいね。
 頂上には十人弱の人が休んでいる。寒ければ殆どが小屋に逃げ込むだろうから、寒くはないって事なのだ。
 下り始めるが、太腿の内側は下りでもつる。兎に角騙し乍らの一手だ。それでも下りは速いし楽だ。とんとんと分岐点、花立を越えて大階段も下ってしまう。登りには苦しめられるが、下りではそれが嘘の様だ。
 「Yと登山する利点は汗をかかない事だな」なぞと失礼をのたまいつつ下る。上着は着っぱなしだったのだから、その通りではある。ゆっくりと歩くもんでね。
 ザックを置いた場所に戻り、ザックを背負って秘密の幕営場所に今晩の宿を張る。後生だから内緒にして下せえよ。
 テントに入ると乾杯である。山より酒が目的でねえのけえ?と思われても文句は無い。実際その傾向はあるのだから(いや、そのものズバリ)。バーボン、日本酒、缶チューハイ、焼酎と揃っている。一寸とした飲み屋テントであります。
 去年は花立で戻ったが、今年は予定通り塔へ登った。Yには二年振りの塔だ。これは結構嬉しくはある。ってな塩梅で、山の話は酒のつまみなのだ。
 一番印象に強いのは去年の春山、トラバースの連続ですっかりYが参ったあれだ。そして寒い夜、滑落しかけた事、なぞと騒ぎ、夕飯後すぐ寝たのが十八時過ぎでした。(続)

0 件のコメント: