2020年3月16日月曜日

休題 その二百九十一



 十一日にバカの一つ覚えで高取山に行った。里湯に着くと休業だ。コロナウイルス対策だとの事だが、二月の末のガラガラ状態を見ると、そりゃあ休業した方が良いでしょう。客が来ないんだもんね。
 こうなりゃ仕方無い、梵天荘へ行こう。フロントへ登って行くと、女将が電話中だ。どうやら店へ注文らしい。刺身を頼んでシジミも、なんて言ってるから宴会の予約が入っているのだろう。
 バリアフリーならぬフルバリアのすっごーく小さな宿がやってけるのが不思議だ。客室は二つしかないんですぞ。それも石段を登って辿り着くのだから、年寄りや身障者には無理だろう。それを身障者夫婦が経営していたのだから、さぞや苦労だっただろう。
 過去形にしたのは、脳梗塞の旦那が亡くなったからだ。夫婦で経営ではなくなっただけで、梵天荘は健在です。女将の説明だと、風邪を引いて肺炎で亡くり、八十才だったそうだ。去年の事なので、普通の肺炎であろう。
 「男の人を残しちゃ可哀そうだから、ちゃんと見送らないとね」と女将は仰る。然り、である。女やもめに花が咲き男やもめに蛆が湧く、って言うでしょうが。
 風呂場に行く時に客室のドアが開いていて畳んだ布団と剥がしたシーツが見えた。多分昨夜宿泊者があったのだろう。昔からの常連さんに支えられているのだろうか。その日だって、宴会が有る様だし。あんなに階段だらけでも来るってえのは、気に入ってるからとしか思えない。
 あたしはあの、飾り気と商売気のなさは大好きである。女将の微妙な相模弁も耳に心地よい。階段が苦にならないってえのも物を言ってるだろうけど。確かにSやKは連れて行けませんなあ。
 残り僅か四件になってしまった鶴巻温泉の宿。最小の梵天荘に、頑張って欲しいのです。

0 件のコメント: