2019年10月3日木曜日

山の報告です その九十五



 翌朝四時前に目が覚め、先ず空を見ると一面の雲。今日の天気は良い予定なのに、下手すっとガスの中かなあ。3000mの山なんだからそれはそれで仕方無い。
 寒いがセーターを脱ぎ、アタックザックを背に歩き出したのが五時二十分。十分も山道を行くと、六十才位の関西弁の女性に追い付かれた。路を譲ったが彼女は直ぐに行き悩む。路がはっきりしないのだ。二人であちこち探すが怪しい踏み跡ばかり。詰まり、あたしが違う踏み跡に踏み入った後を彼女も付いて来たって事だ。
 「戻ります」と言って戻るとマーカーを見つけた。「あった、此処が正規ルート」。彼女は「二人で良かった、一人だったらどもならへん」と喜んでいたが、彼女一人なら路を間違ってはいない。ラフなあたしの犠牲者です。それからは相前後して頂上へ行く事になる。
 五合目あたりから青空が広がり出して、六合目の森林限界を越える頃には快晴となった。関西弁の女性も、外の三人のパーティと一緒に撮影に夢中だ。あたしはゆっくりと進む。未だ未だ先は長い。
 小仙丈岳から見ると小さく頂上が見える。下って来る人にも数人会う。小屋泊まりでピークを踏んで下りの人達だ。皆さん「良い天気ですね!」と大喜びである。此の後稜線上で会う全ての人と同じ言葉を交わし合う事になる。「良い天気で良かったですね!」。
 何度も書いて何だけど(何?)山はお天気商売だ。降っていてもガスっていても、悲しいものなのだ。森林限界を越えても、風が容赦なく当たって寒いだけ。なーんも見えずに早く樹林帯に逃げ込みたいと望むのみ。処が快晴ならば、極めて快適な稜線漫歩となる。周りの山々が皆見渡せるんですぞ。
 カールを巻き乍らゆっくりと歩を運ぶ。頂上の人達の話声が近くなって来て、一登りで3032,7mの頂上に着いた。(続)

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