2019年5月12日日曜日

山の報告です その九十三



 写真は一ノ倉岳へ向かう途中で顧みた谷川岳です。
 さて、そのうちに夏道を下る様になった。Yは膝のバネが機能を喪失し、ゾンビが下っているかの様子である。そのうちに雪の斜面に来た。
私「Y、滑って降りろ」
Y「う、う」
 Yは尻で滑り降りた。これはYも気に入ったらしい。何せ歩かずに高度を下げられるのだから、こんな良い話はない訳だ。
 最後の滑りを終えて広い雪野原に出た。看板があったので見ると駐車場だった。土樽駅への地図もあった。平地の一歩きだ、やったね、と思ったのが大間違い。Yの消耗は予想以上で、首はがっくと落ち、地面を向いてノロノロ歩を進めるのがやっとになったのだ。
 オコジョが急に出て来て、5m程前の雪の上で止まりこっちを見ている。もう茶色に毛
色は変わっている。「オコジョだ!」とYを振り返る10m以上遅れてトボトボと来る。オコジョなんかどうでも良いに決まってる。
 やっと駅に着いた。勿の論、無人駅である。十二時半だった。次の列車は一時間半待たねばならない。タクシーを呼ぼうとすると。
Y「待てば良い、一時間半位」
私「え?」
Y「ぼんやり待ちたい。もう何もしたくない、蕎麦も温泉もいらない」
 うーん、完璧に参ったと言う事ですなあ。でもタクシーを呼んで湯沢に出て、山菜蕎麦を食べた。タクシーに乗ってるうちに元気が出て来たそうだ。蕎麦を食べたらもっと元気が出て来た様で、温泉にはいろうと言い出した。残念乍らあたしは二晩の寒さで風邪気味になって、無闇とクシャミと鼻水が出る。湯ざめを嫌って温泉はなしにした。
 ハイボールを持って新幹線に乗り込んだのだが、春山の縦走はこれで最後にする、と宣言した。体力的にも限界だろう。今迄の様にベースを張ってアタック、それが一番ってこってす。しかし無事で良かったですよ。

2 件のコメント:

悪戯っ子 さんのコメント...

お元気そうな山岳行、谷川岳や丹沢でお元気そうなブログを興味深く読ませております。しかし無事故歴五十五年は素晴らしいですね。私は蔵王の林間コースでルートを外れたり春の浅間山のスキーで日没寸前で足がつりあわや遭難寸前の経験があります。後から山屋さんに叱られました。あの時期は雪崩が起きるそうなのです。
白馬は国民宿舎から八方尾根の三合目まで二時間かけて登り下りは15分という無謀な滑りをしていた。十人以上で行った時にロバ(渾名だが名前を忘れました)がガスに巻かれて女性を数人つれて谷の方に迷い込みました。ガスのなかを大声で捜して事なきを得ましたが間違えて下れば完全に遭難していました。
また、一緒にいったSTが青氷でエッジを外してカールを滑り落ちました。かなり転げ落ちて声も届かない位でしたが、幸いに怪我もなく登って来ました。
三合目直前でピッケルが埋まっていたのを発見しましたが、もしかして遺体も埋まって居たかも知れないと思い、ぞっとしました。

kenzaburou さんのコメント...

悪戯っ子さんも色々ヤバイ目に会ってますなあ。
でも若さで乗り切った感ありですね。流石です。
あたしゃあリアルタイムなので結構しんどいですわw