2019年3月13日水曜日

休題 その二百四十八



 前章でYから冬山用のジャケットについての問い合わせがあって、次に会った時は新品のジャケットを着て来た、と書いた。何で会ったかと言うと、Yの退職祝いで旅行に行ったのだ。もう一人同行者がいた。Mである。
 Yは同じ会社の同僚だったとは既述だ。Yは定年退職してから嘱託で働いていたのだ。その会社が某企業に買収され、六十才以上の人間は整理されて、退職したのだ。
 これは仕方ない、世の中の定理みたいなもんである。買収した会社から如何に利益を絞り出すかが目的なんだから、人員は遠慮無く整理される。残った人間でやれ、って事。
 Mは定年を解除されて現役で営業として働いていたが、エリアが千葉県全域と神奈川県西部なので、広い上に離れている。おまけにMの家は九十九里なのだ。
 たとえば平塚で夜に仕事が終わる。九十九里迄帰らなければならない。何と遠い、丸で旅行じゃないかい!
 翌日も同じ会社に来なければならないとする。泊まれば良いじゃんさあ。それが、何か持って来なければならなかったり、段取りが必要だったりしてデポへ行かなければならないので、結局帰る事になるんだって。
 詰まり疲れ切ってしまったのだ。休日はひたすら寝て過ごす事が多いのだそうだ。そりゃあそうでしょう。千葉県全域だけでも充分なの、普通の人は。で、流石のMも体が続かずに辞めたのだった。
 じゃあ山ではなく旅館でご苦労さん会をやろうとなったのだ。箱根湯本の宿が、普段は一万円以上だが、部屋はおまかせで九千円一寸との企画があったので、それにした。
 その宿は、あたしがYのいた会社を辞めた時に、妻とご苦労さん会で泊まった宿だ。まあまあの宿だったので選んだのだ。部屋はおまかせなのだから、石垣しか見えない部屋だった。そんなのは男三人、問題じゃない。(続)

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