頂上に立ったがガスと風のみ。一パーティが休んでいたが、頂上小屋へ向かって行った。本当に頂上の一角にあるのだ。展望は最高だろうが(晴れてればね)さぞや風に吹かれる事だろう。
何も見えなくて寒いだけなのでとっとと下るとする。展望が有れば最高なのになあ。相手はお天気なので仕方ないですなあ。登れただけでも上等だと思おう。
岩稜部分を慎重に下る。鎖が有るので偉く安全だ。十二年前は雪のついた岩に結構緊張したものだけど。
文三郎尾根を下る段になると階段が厄介だ。アイゼンなので真っ直ぐに足を置けない。横に蟹歩きをしなければならない。前を行くパーティも蟹歩きだ。
単独の男性が登って来て聞く。「どこから」「行者小屋」「何時」「六時二十分」「頂上何時」「時計みてない」「展望は」「ない」。寒さで口がこわばっているので、単語を並べた様な会話になってしまうのだ。
緩みに着いて休んでいると三人のパーティが登って来た。「上は吹雪ですか」「ガスだけど降ってませんよ」「眉毛迄白いので」。
フードも被らずにいたので、真っ白になっていた様だ。ふと気付いて鼻を触ると、見事に二本鼻水の氷が有る。しまった、水っ洟が凍り付いていたんだ。まるで“だじょーん”である。ずーっと洟氷で歩いてたんだ。良い男が台無しじゃないか(笑)。氷を剥がして何食わぬ顔とする。丸で手遅れではあるんだが。
帰りのバスは十三時二十分と十四時四十五分。出来たら早いバスに乗りたいが、ダメならそれで構わない。
小屋に降り着いてオーバーズボンを外していたら「未だ十時前だ」と誰かの声。え、と時計を見ると九時四十分だった。三時間十分で赤岳をピストンした訳だ。前日が不調だったのに偉く良いペースじゃないか。(続)
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