2018年10月8日月曜日

山の報告です その七十四



 樹林帯の下りを続け、一休みしているとあたしより一寸と若そうな男性が抜いて行く。荷物からしてピストンだろう。
 普通のパーティならこの侭桂小場へ降りて、今日中に東京(或いはその他)へ帰るのだ。ふっふっふ、あたしは夜遅く帰り着くなんて思想は持っていない。
 一時間十五分の下りで大樽避難小屋がある。そこで山中二泊目を迎えようと言う企てだ。テント場を出てから歩行時間で五時間ぽっち、これじゃああんまりかな、と思ってはいたが、実際テントを背負って歩いて見たら丁度良いのだ。歳相応なんですなあ。
 小屋から駐車場へは下りで二時間、偉く半端な位置なので同宿舎はあるまい。独り占めの避難小屋で最後の夜を過ごすのだ。
 ビンゴ! 小屋には誰もいない。水を汲んで火器を揃え、準備万端整えて一人でチューハイで乾杯して居るとガヤガヤと人声。言葉からして頂上で会ったおばさんのパーティだ。「小屋の戸が開けっ放しや、誰かいるんやろか」と覗き込む。「あ、頂上の人やね、何時来なはったの」。抜かれなかったのに先に着いているのが不思議だと言う事。
 冬道で来たと説明する。納得してガヤガヤと下って行った。降りてから相当遠く迄帰る訳なのだろう。元気はつらつであります。
 あたしは静かな夜を過ごし、明るくなった五時十五分に出発、天気はまあまあ、朝なので足取りも軽く行く。もう登って来る青年がいる。歩き始めはヘッドライトだっただろう。
 外に二人、うち一人は単独女性と擦れ違う。人気の山だったんだなあ。1500mの標識が有ったのでタクシーを呼び、二十分程で桂小場に着く。タクシーが待っていた。伊那のバスターミナルへ着くと十五分後に新宿行バスがある。ノータイムと言って良かろう。
 ウイスキーを飲んで寝乍ら、昼前には新宿に着いた。何かと恵まれた中央アルプス最北部でした。

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