2018年9月23日日曜日

山の報告です その七十



 一人でのテント暮らしは、早めの夕飯を終えるとウイスキーを舐め、後は寝るしかない。寒いなあと思い乍らも寝付いて、フと気付くとテントが明るい。時間は零時過ぎ、窓から覗くと月である。
 表に出て月と星空を見上げた。やったぜ、シェラフに入る時はガスっていたが、明日の天気は保証書付くきだぜ!
 離れたテントから男性がヘッドランプを頼りにやって来る。あたしは無精なもんで、一番小屋に(詰まりトイレに)近い場所に張っていたのだ。だもんで彼はトイレへ行く訳だ。
 その男性と天気が良くなって良かったと喜び合う。ついでに月の傍に火星が明るく見えたので教え、カシオペアと北極星も教えたが、余計な事だったかも知れない。本人は喜んでいた様だが、本心は早くトイレにいきたかったのかもですよ。心配りのないあたし。
 その侭寝るのも惜しいので、又水割りを飲んだって言うお決まりのお粗末。とは言っても、あの環境で酒も飲まず寝れますかって、余りに勿体なくてさ。
 寒い寒いと目覚めると、日の出間近で地平線が赤く染まっている。その色を見て、晴天は午前中のみだな、と思ったのは一瞬の事、即シェラフを畳み、カメラを持って地下足袋を穿いた。あ、今回は地下足袋で行ったのだ。何かでアルプスには地下足袋では行かない、加藤文太郎を侮辱する事になるから、とか書いたけど、やっちまったですよ。
 中岳へ登る。風が冷たいがセーターを着てるのみ。六、七人いる諸君は完全装備だ。あたしゃあ飛び起きてその侭なんでね。
 日の出を迎えてからテントへ戻って朝食である。ったってカップラーメンなんだけどね。コーヒー飲んだりお茶飲んだりしてから、撤収して出発。寒いとは思ったが零度にはなっていなかった。氷点下になるとテントの表面は氷だから直ぐ分かる。(続)

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