2018年2月9日金曜日

休題 その二百六




 {皆、大丈夫と言う}
 此の間、高取山から下りて来て里湯に浸かっていたら、初老の男性が片足を湯に入れてガックリと前に倒れた。横にいた男性が驚いて声をかけたが「大丈夫」と言う。
 あたしも寄って行ったが、片足は風呂の中、片足は風呂の外で動けない。外の人も「誰か呼ぼうか」と言う。係員が二人来て水を飲ませ椅子に座らせた。本人は「大丈夫と」繰り返すが、ちっとも大丈夫じゃない。
 その一週間程前にも、里湯に入って脱衣場に来ると、裸の男性が風呂からやって来て「人が倒れたからフロントに連絡してください」と言って急いで風呂に戻った。
 七、八人いた人はあたしも含めて裸だ。脱衣所なので仕方ない。一人だけ小太りの男性がパンツに半袖シャツを着ていた。彼が知らせに飛び出ようとしたとき誰かが言った。「電話があるぞ」。
 落ち着いてる人もいるものだ。立派だ。あたしは電話には気付かなかった。小太りの男性は電話で「トイレで人が倒れました」。同時にあたしを含め数人の声。「便所じゃない、風呂場だ!」。「慌てちゃって」と小太りの男性。
 ぞろぞろと風呂場に行くと初老の男性が足を投げ出して座り「大丈夫」と言っている。これなら大丈夫だろうと根拠無く皆で言う。係り員が来たのでぞろぞろ脱衣所に戻った。
 此の間近所の日帰り温泉に行ったら、倒れたらしい男性を係員が支えている。例に依って「大丈夫」と言っている。結局椅子に座らされ、水を飲まされていた。
 立て続けに三件である。湯に入って(或いは出て)倒れる。大事にならずに済んで良かったが、判で押した様に「大丈夫」と言う。
 迷惑や心配を掛けたくない気持ちは良く分かるが、既に充分迷惑や心配をかけているのだ。気温が低いので風呂場との温度差は大きい。大丈夫と思わずに気を付けましょう。

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