2017年8月20日日曜日

閑話 その二百三十七




 さて、ドロドロの汚れ姿で大倉尾根に立った我々。やって来る登山者は「何事?」と訝しかっただろう。
 此処迄来ればあと僅かでシークレット幕営地だ。見慣れた傾斜を下ると其処だ。尤も、Yは筋肉が疲れ切っていて其の下りが下れず、横歩きで下ったと、テント内で聞いた。よーっく分かる。筋肉を酷使した訳だ。
 心配していた纏わるブヨも殆ど無くテントを張り、中に入ろうとするとYが新兵器をご披露してくれた。虫除けスプレーだが、霧の塊となって漂う。テントの入口に吹いて、其の間に入っちまうのだ。偉く有効だ。
 乾杯、とやってるうちに雨が降り出した。グッドなタイミングである。とYが「イテテテ」と始めた。つったのだ。一ヶ所が収まると、又次が始まる。辛いものなのですぞ。
 一寸と体を動かしたらあたしも「イテテテ」と来た。其れからは交代で痛がると言うお粗末。いやはや何とも、である。
 此の日の酒、焼酎は「晴耕雨読」。次女が成城石井で見つけたと言うものだが、上品で味がある。優れものだ。ウイスキーはYの持って来たトリス。下品で懐かしい味だ。
 足をつり乍らもチビチビとやるのだ。やれ上品だ、下品だと騒ぐ合間に「イテテテ」である。罪が無いってえば罪が無い話ですなあ。
 小田原で買った潰れ梅(お値打ちの梅干し、大きいのだ)を二人で食べ、味噌汁を飲んだらやっと「イテテテ」騒ぎは収まった。塩分とミネラルの補給が出来たってこった。何せ二人とも、汗でびっしょりになったんでね。
 例に依って十八時過ぎに一旦眠る。Yは何時もの様に「眠れるかなあ」なぞと言っていたが、其の言葉が終わった時には寝付いていた。何と幸せな奴!
 あたしは中々寝付けない。雨音は一段と激しさを増して来た。此のテントはフライを交換したので、びくともしないのだ。続きます。

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