2017年8月16日水曜日

閑話 その二百三十六




 異様に傾斜のキツい植林帯を抜けたら、もっと傾斜が増すのは当然だろう。さもなきゃ植林が続いている筈だもんねえ。作業不能だから植林が途絶えた訳なんでね。
 あたしの地下足袋歴は長いが、腹を切ってからは滅茶苦茶に筋力が落ちて、足底にも力が入らなくなったと痛感する。足底に力が無いと急斜のザラザラは耐えられない。
 って事は地下足袋を履いて山を登る(変な斜面の事)筋力を失ったって事だす(涙)。其れは前から分かっていて、何度か書いた覚えはあるのだけどね。
 従って、足元の確かさは確りした登山靴のYだ。一蹴りで靴が土にめり込む。こっちは地下足袋でズルズル足掻いている。滑り落ちたら、随分と下に落ちる。無事なら良いが、とてもそうは思えない。もしも無事でも、こんなとこ登り返すなんて嫌だ!
 文句を言おうと泣いて騒ごうと、登るしか方法は無い。“絶対”との言葉は滅多に使うべきでは無いと心得てはいるけど、此の場合は、“絶対”に登るしかない!
 足底に力を入れて、何の頼りにもならない小岩(殆どが浮石)や草や根(抜けるは折れるは)を頼って行くのは、とても嬉しい。4駆と言えば聞こえは良いが、トカゲになった私~♪ ってこった。
 こんな嘆きは数知れず書いて来た。以下省略って事にしよう。で、稜線直下になって見上げると、トイレだ。うーん、我々らしい結末では有るなあ。
 駒止小屋にドンぴたり、やったぜ! Yを振り返って「駒止小屋だ」と叫んだが、こっちを見はしたが無反応、目の前の一歩を登るので必死なのだろう。実に良く分かる、其の覚えはたっぷり有るだで。
 やがて二人とも登山道に立った。堀山の一角だ。登山者がどんどん登って来る。泥塗れで汚いのはあたし達のみです。続きます。

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