2017年7月6日木曜日

閑話 その二百三十一




 花立大階段が馬鹿尾根のハイライトで有る事は疑い無いだろう。       見晴らしが良い事、段差が高い事、当然乍ら長い事。ゾンビの様によろめく人が居るのも無理は無い。
 取り付けば、口ほどにも無くちゃんと着く。花立小屋前ではほぼ全員が休む。素通りする人間は、五パーティ位は見た事が有るかも知れない。但し此の五十年の間でだ!
 此の日も皆さん思い思いに休んで居る。あたしもパンなぞ食べてエネルギーを補給する。

 花立のピークへ黙々と登り、ガスの巻く大丸を左に見つつ塔に向かう。白い花の咲く樹が有って、男性が説明して居る。単独行同士の様だ。あたしも思わず足を止めた。
男1「カマツカって言うんですよ」
男2「カマツカ?」
男1「木が硬いので釜の柄に使ったんで、そう名付けられたんです」
男2・私「ほー」
 二人は未だ何やら話して居たが、あたしは頂上を目指す。何せ、やや急いで登ろうって言うバカな企画なのだから。
 最後の階段に掛かると空は青く抜けて居る。頂上には五パーティ程しか居ない。未だ早いからだ。残念乍ら景色は霞んで居る。大山方面は濃いガスだ。
 一寸と休んで下り始める。擦れ違う諸君は若者が多く、流石にゾンビ状態の者は殆ど居ない。もっと後だと中高年が多くなるので、見るも気の毒な状態になってるんだけどね。
 白髪の七十代半ばの女性が、確りした足取りで登って来る。見事なり、であります。そう在りたいものだ。
 花立を越え、小屋に向かって居ると、思いっ切り左の土踏まずで岩角を踏んづけた。でへーーっ、と言う程痛くてよろめいちまった。
 其れからは痛む左の足底を庇って、彼方此方に変に力を掛けつつ下る事になった。バカな企画なので当然で有るのです。続きます。

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