2017年7月12日水曜日

閑話 その二百三十二




 土踏まずを痛めて庇いつつ下ると、又其の痛い方で石を踏んで、ひええーーっと泣く思い、地団駄踏んじまったぜ、ったくよお。
 成るべく足裏を着かない様に、階段は丸太を爪先で踏んで下る。それもやや急いでなので、ピョンピョンと言った感じになるのだ。若い衆なら平気でやってのけるのだが、あたしの歳ではチトキツイ。いや、大分キツイ。
 上手くしたもので、見晴らし茶屋の下りで、又々痛む足で石を踏んだ。エーン、痛いよおーーー。
 痛さに追われて大分下って仕舞った。大階段の下に戻ろう。中年男性が登って来たので脇に避けた。すると其の男性は「お早う御座います」と丁寧に挨拶して、路を避けた。お言葉に甘えて先に下ると声を掛けられた。
男性「地下足袋は楽ですか」
私「慣れれば楽ですよ」
 高取山で良く交わす台詞だ。正確に言えば、「慣れても、岩を踏むとすっごーーく痛いんですよ」なのだが、勿論痛そうな素振りも見せはしない。幾つになってもカッコマン、成りたくって成りきれない、ですよ。
 三十歳位のカップルが登って来る。
男性「のり子ちゃんの言う通り、最高だね」
 空が青い事を言ってるのだろう。景色はガスっぽい事を未だ知らないのだ。あたしの妻も典子だが、典子ちゃんとは呼ばないな、なぞと一人で面白がって居た。
 五人の若い男女のパーティが来る。皆さん確りしたスタイルだ。我が身と引き比べるのも気が引ける程だ。洒落たゴアの靴で足元を固めて居る。あたしは軍足に地下足袋だ。だもんで痛い痛いと泣く事になるんですなあ。自業自得ってもんなの。
 下りは一本松の上で休む。此れも決まり事になって久しい。冬だと日差しを求めて一本松で休む事が多い。夏だで、木陰が丁度心地良い。続きます。

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