2017年4月9日日曜日

どこに来た その三




 出掛けるかなあ、停滞かなあ、と思い患って煙草をくゆらす。我乍ら気の毒な状況だ。何度も外を覗く。天気回復の兆しが全く無ければ、停滞しか無い。本当に、我乍ら可哀そうで有る。
 既述を恐れずダブって書けば、停滞の時は時間も停滞するのだ。複数の時は良い。下らない話も出来る。愚痴を言い合う事も出来る。冗談を言って笑う事も出来る。でも、単独の停滞の時はどうすんのさ。
 外は雨か霙か雪。風も吹いて居る事だろう。とても嬉しい。風音や雨音を友にして、ゴロゴロしたり、コーヒー飲んだり、一服点けたりして、もう二時間も経ったかと思っても、せいぜい二十分なの(涙)。
 悪天候の一日を、テントでたった一人で過ごすのは、思いの外大変なのだ。嫌になっちまうなあ、なぞと呟くのだ。風に煽られるテントもメンテしなきゃなんないし。ま、其の作業は時間潰しにはなるんだけど。
  大体からして、ちっとも楽しく無くて、明日の不安のみが大きいのだ。明日も悪天候だったら、停滞か撤退かとか。第一、おらあ無事に帰れるのけえ???
ね、可哀そうでしょうが。
 処がどっこい、天気回復の兆しが見つかれば、急に動作が速くなる。きっと動悸も速くなる。多分、緊張して居乍らも生き生きして居る事だろう。おめでとう!!
 そして慌てふためいて撤収し、ザックを背に出発するのだ。雲が切れて、日でも指して来ようものなら、ヤッホー!で有る。
 雪山では無かった。丹沢の春だ。
 春のハイライトは芽吹きで有ろう。柔らかい緑に山が覆われる。あの色は外には無い。絶対無い。落葉樹林帯の住人のみが、会える色だ。縄文の昔、いや其れより遥か遥か以前から、日本人には馴染み深い色彩の筈だ。
 ブナ、楢、クヌギ、楓、等々ばかりで無く、唐松も芽吹く。柔らかい芽を出す。何と愛おしい木々達よ。

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