2017年4月12日水曜日

閑話 その二百二十四




 一条のトレースをひたすら登る。傾斜がキツい所では滑る。靴を蹴込む様にしなければならない。普段は木橋と階段の連続なのだが、今は全てが雪の下だ。
 と、ぱっこりと山頂に出た。雪に気を取られていたもんだで、何気なく到着。一寸と嬉しくは有りますなあ。
 快晴は去って、半曇りになっていた。それでも山々は見える。富士山は隠れちまったけどね。富士山にはしょっちゅうお目にかかれるので、それは構わない。
 山頂を移動するにも、脛迄もぐる。表尾根への下り口へ行くと、若者と初老の男性がいて「二人位行ったかな」なぞと話している。単独行者同士らしい。
 表尾根に向かうのは結構大変だろう。下手すると腰迄雪に埋まる。登山道がUの字に掘れている事が多いので、其処へ入るとそうなって大苦労させられる訳。
 初老の男性が前進を始めた。腿迄もぐる。
男性「こりゃあ深いや」
私「表尾根ですか」
男性「いや、其処で写真を撮ろうと思って」
 それなら納得、と山頂のトレースへ戻る。ポツポツと登山者が上がって来る。皆さん、雪が降ったぞーっとやって来たのだろう。期待通りの雪景色だ、里は春なのに。
 これで日がさしていれば言う事無しなのだが、贅沢は言うまい。ガスで無かっただけでも見っけもんだろう。
 下りに掛かると、登りで滑った場所はより滑る。まあ、当たり前ですなあ。おっとっとと滑り乍ら下り、二度程尻餅をついた。雪の上なのでどうって事は無いが、雪の歩き方がやけに下手になったな、と痛感する。
 手術前は上手く滑り乍ら、すいすいと下ったものだ。今は、滑るまいと踏ん張って、見事に転んでいる。雪の扱い方を完全に忘れたかの様な有様だ。続きます。

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