2017年4月15日土曜日

どこに来た その四




 既述だが、山仲間たちが新緑の美しさに気付き、口に出して讃嘆する様になったのは、四十歳を過ぎてからだった。ま、気付かないもんなんでしょう、若いうちは。
 矢張り女性の感性が鋭い。最初の最初は、Sの奥さんと、同期生の女性Kwだった。低山へ向かうバスの中、山々は柔らかい緑に覆われて居た。
S夫人「まあ、綺麗!」
Kw「本当ねえ、新緑が凄い!」
男達「……?」
 駄目だ。酒と食い物にしか興味の無い奴等には、見事な新緑が目に入らないのだ。尤も、私も其の筆頭格なんだけどね(忸怩)。
 確かに初っ端は躓いたものの、我々だって決して感性ゼロでは無い。男達も直ぐに新緑を愛でる様になったのは、言う迄も無い。
 そして三つ葉ツツジが咲き、山桜が咲き、山躑躅が咲き、新緑となった山に色んな花が咲くのだ。へへへ、自慢じゃ無いけど、花の名前が分からないので、色んな、で失礼。
 面白いもので、私は植物に弱い。木でも花でも全く名前が覚えられないって事です。一応覚えようとはするのだが、速攻忘れて仕舞うのだ。其れの何処が面白いのかって?……面白くないです。
 秋の彩と一味違う春の山。木や花の名前は分からなくても、目を楽しませてくれる。私でさえそうなんだから、植物好きの諸君にとっては、堪らないシーズンの筈だ。従って、丹沢では五月が一番人が多いのだ。
 沢でも、五月ともなれば新緑に覆われる。水も温むので、絶好の時期で有る。川面も緑に染まるのだ。とても素敵ですぞ。尤も曇って居れば色合いも消え、一寸と寒くも有るけど。春でも山はお天気商売だ。
 突如襲って来るメイストリームも、樹林帯の丹沢では危険は無い。既述の、針の木の冬季小屋でガタガタと小屋ごと揺すられ、目地の間から雨が飛沫となって吹き込み、テントなら間違い無く吹き飛ばされる、と言う様な恐ろしい思いは無いので、安心だ。

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