2016年12月19日月曜日

休題 その百八十三




 「海賊と呼ばれた男」を観た。百田氏のベストセラーだが、書評は読んだが本は読んでいない。映画になったので出掛けた訳だ。
 映画は原作より遥かに劣化するのが通例だが、原作を読んでなかったので、其の意味での不満を感じる事がなかった事は目出度い。
 出光の創始者の苦労、と言うより戦いを描いた作品だ。前半は売る苦労、と言うより戦い、後半は仕入れのくろ、……戦い。
 唯一の純粋日本資本の石油会社を、造り守ったのだから、戦いである。石油メジャーの力とあくどさは知る人ぞ知る、だろう。
 へへへ、偉そうにのたもうたが、あたしも落合信彦氏の著書で知ってるだけなんだけどね。メジャーは、場合に依っては政府をも動かす力が有る事だけは、理解してるつもだ。其の欧米のメジャーと真っ向勝負をしたのが凄い。途轍も無く凄い。
 その動機づけこそ百田氏の書きたかった事なのだろう。
 台詞で語っているが、正確に再現は不能なので意訳する。多分外れてはなかろうて。
 石油は国家経済の血液である。其れを絶たれて日本は戦争に追い込まれ敗れた。国家の血液を外国資本に委ねる訳にはいかなない。断じてそうはさせない。
 侠(おとこ)である。日本(にっぽん)男子である。原作が百七十万部売れたってえのは、日本も捨てたもんじゃ無いってこった。
 時代考証は念密だ。戦後の焼け跡や車、船や調度品に至る迄、隙がない。ただ、俳優が当時の発声が出来ない。変に押しつぶした声しか出せない。ガマ蛙じゃあ無いんだから、弁してよねえ。
 当時は号令訓練を受ける。従って遠くへ通る発声が普通だ。アナウンサーの声も甲高いでしょうが。その位の事が分かってる監督も、もう死に絶えたのだろう。
 原作を読み損ねた人には絶対お奨めです。

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