2016年6月11日土曜日

閑話 その百九十五




 一ノ沢の次の週に、飽きもせず高取山へ出掛けた。飽きるもクソもない、リハビリなのだから。温泉で一杯ってのが物を言ってるのは決して否定はしないけどね。
 曇天で且つ前日の雨の為に草も地面も濡れている。聖峰で足がチクっとした。見ると蛭が付いている。あ、此の野郎、と小さく叫んで枝でそぎ落とした。其処へ爺さん(七十代半ば)が登って来た。
爺さん「蛭が出たかね」
 小さな叫びが聞こえたらしい。
爺さん「濡れてるから多いなあ」
 花の写真を撮っていると。
爺さん「蛭を撮ってんのかい」
私「花ですよ」
 面白い爺さんで有る。それに偉く速い。バスで追い越したからあたしより十分は遅れていた筈だが、五分差で着いている。其の後は会わなかったから聖峰が目的地だろう。
 高取山を踏み、念仏山の大分手前迄人に会わない。天気が良ければ大勢登ってるだろうに。湿った曇天の時はこんなもんだ。蛭は出るし景色は無いし。
 で、念仏山の大分手前、中年女性の二人連れに出会った。
女性「高取山はどっちでしょう」
私「此れを真っ直ぐですよ」
女性「良かった、迷ったかと思って」
もう一人の女性「蛭が多いですね」
私「多いですよ」
女性「蛭が付いたら、取った方が良いでしょうか」
 何と幸せな二人、こんな事を聞くとは蛭に喰われた事が無いんだ!!
私「取った方が良いです」
 「いや、付けておいた方が良いです」と答えたら、やがてどんな騒ぎになるかと考えて、一人で喜んでいた。勿論そんな悪趣味な事は言わないけどね。そういう下らない事を考えていると歩度が伸びるのだ。あたしゃあ余程人が悪いのだろう。
 で、温泉で一杯。リハビリは喜んでやらなくちゃいけません。

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