2016年5月22日日曜日

閑話 その百九十一




 去年の五月はYと一ノ沢に入って偉く消耗して、衰えを嫌と言う程感じたとは既述で有る。沢登りは登山道を行く十倍位の負担が掛かるのだ。
 今年も凝りもせずにYと一ノ沢に入った。二十一日(土)の渋沢はバスを待つ登山者が長蛇の列だ。五月なので当然では有る。臨時バスがどんどん出るので、思う程の事も無く大倉に着いた。
 一時間林道を歩き沢の入口に着いたが、今回は尾根を行き、林道から沢に入る事にした。だって、沢を行っても直ぐに急斜面を這い登って林道に出、又沢に戻るのだからだ。
 小さい沢だが滑や小滝が次々現れて中々面白い。極力本流を行ったつもりだが、見覚えが全く無い。ま、沢は様子を変えるからね。
 たかだか2m半位の小滝が現れたが、ホールドもスタンスも欲しい所に無い。空身になって地下足袋の底や腕迄岩に密着させて無理やり登って、サブザイルでYを引き上げた。
 此処までは上々だった。やがて現れた小滝が苔に覆われて逆送気味なのだ。一寸と試みて直ぐに駄目だと悟った。こんな滝に会った覚えは無い。本流を外れてるって事だ(恥)。
 文字通りのV字谷で左右共切り立っている。詰まり戻るしか手が無いのだ。一寸と戻ると左に何とか行けそうな所を見つけた。此処しかないべさ、と取り付くと土がズルズル落ちて行く塩梅。何時も乍ら嫌な局面だ。
 立木迄へずれば登れるだろうと清朝に崩れる土を踏んで居たらYがガッツガッツと靴を蹴り込んで物凄い勢いで直登を始めた。お、偉く元気だぞ。あたしは予定通り立木に着いてから登って行った。やや傾斜の緩んだ所でYに追い付いた。
私「いやあ、元気だね」
Y「じっとしてると足元が崩れちゃうんだよ」
 よーっく分かります。あたしが慎重にへずって居るうちにYの足元は崩れて行き、滑落寸前に追い込まれたってこったね。
 続きます。

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