2015年11月19日木曜日

達人は行く その一





 今更改めて書くのも変だけれど、私は無愛想で、且つ勝手な奴だと思われて居るらしい。知人に聞き回った訳では無いので、私が勝手にそう感じて居るだけだ。
 少なくとも、Yには聞いた事が有る。彼曰く、全く其の通り、だそうだ。其れに加えて我儘だそうだ。自覚は、残念乍ら有る。Yは正確に見て居る訳だ。何せ妻より多い時間を、
共に過ごして来たのだから、見抜かれる。同じ会社の同じ部門、一緒に出張にも行き、一緒に山へ行き、其の上同じ劇団仲間でも有るのだから、当たり前の事だ。
 其の無愛想で身勝手で我儘な奴が、山に入ると豹変し、野次馬になる。当然乍ら何度も書いて居る。
 色々な登山者を横目で見て、喜んで居る訳だ。其の人が困って居るなら別だが、さも無けりゃあ見るだけ。変な奴だって?だからはなから、そう言ってるだろがよ!
 さて、題名通りに行こう。とは言っても、私はクライミング(除く、ザレ崖)と海外はやらないので、自分の狭い見聞に限られるのはご容赦。
 三昔前で、尚且つ前述となるが、太郎平への登りで出会った女性を最初にあげよう。三十一寸と前(と見た)のきりっとした人だった。上着もズボンも黒一色だった。
 当時の私は結構速かったが、すと抜かれた。クッソーと頑張ったが追い付けない。どんどん離されるばかり。背にした荷物は違うが、此処は素直にシャッポを脱ぎました。
 洒落たスタイルと言い、颯爽とした歩きと言い、立派に達人で有る。新田次郎が会ったとしたら、彼女を主役に一本書いただろう、と思わされる。尤も彼の悪い癖で、悪役にされちまうだろうけどね。(新田次郎の山岳小説では、女性は殆ど悪役だ)
 (達人は行く その二へ続く)

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