2015年6月18日木曜日

休題 その百四十七




 退院する時、医師に聞いた。「お酒はビール一杯位なら良いですか」。答えは「血行が良くなるので、少しなら良いです」。
 さて、其の少しが問題だ。あたしはビールを飲む習慣は無い。山と温泉に行った時は別だ。ビール命さ。でも普段は焼酎派なのだ。
 ビール一杯を焼酎に直すと、コップ二分目になっちまう。それじゃああんまりでねえだかよ(涙)。
 ビール一杯位と聞いたのは、御愛想だ。少しなら良いです、の返事を引き出したかった
だけだ。世に言う処の戦術で有る。少しって、正確な量を表してないので、勝手に設定できるじゃないですか、へっへっへ(悪い奴)。
 何に対する戦術? 妻だ。やっと退院したあたしは、妻の厳重な監視下に置かれたのだ。勿論あたしの身を思ってとだとは、重々承知してるんだけど、酒を飲みたいなぞと言おうものなら、大騒動になるのが目に見えている。
 従って医者の、少しなら、の発言が必要だったのだ。少しなら血行を良くするから良いんだってさと、妻の監視下、少しずつ飲み始めた。
 しかし、良くしたもので少ししか飲めない。少々飲めば、もう飲めない。体が知っているのだ。感心する程体は正直だ。そんなもんだろうなあ、と思うばかりだった。
 でも、日数がたてば飲める様になる。それだけ回復した訳だ。妻は監視を緩めない。そりゃそうだろう。お葬式寸前になってから僅か一月半なのだから。
 お蔭様で、今は手術前の七掛け位は、どうにか飲める様になった。それでも妻は、飲み過ぎだ、と心配する。大丈夫だと言っても聞かない。
 程々にするから、そう心配しなさんな、子供じゃないんだから。え、駄目? 確かに自覚は有ります。気を付けます……。

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