2014年2月14日金曜日

閑話 その百十八





 八日、関東地方は四十五年振りの雪に見舞われた。都心で25Cm、町田では40Cm近くの積雪だった。
 交通網がやられて、翌十日の予定はキャンセルだ。よし、新雪の塔ヶ岳へ登ろう。予報では快晴で有る。万歳!!
 十日、日曜日だ。渋沢のバス停には三十人程が並んで居る。バスは来ない。四十分も立って居たらやって来た。あたしの後ろにも三十人程が並んで居た。
 可哀そうに、尾っぽに近い諸君は積み残された。次のバスが何時来るかも分からないのに。車内はギューギューなので仕方が無い。
 日曜にしては一時間近く待って(あたしより前の諸君はそうだろう)六十人とは、偉く少ない。普通なら三本は満員バスが行く。
 勿論、大雪の翌日だからだ。好き者が飛んで来たのだ。平均年齢が若い。普段の六十代半ばより、二十歳以上は若い。詰まり四十代初めが平均だ。あたしと同年代は殆ど居ない。若者(比あたし)の世界に来ちまったぜ。
 大倉は真っ白。大倉でスパッツを着けたのは、五十年の経験で初めての事だ。降雪直後でも積雪が本格化するのは、花立から上と言うのが、経験則。今回は違う訳だ。
 不規則に踏まれた雪を行く。意外と歩きにくいもんだ。どんどん深くなり、やがて新雪をキュッキュと登り、と思ったのだが様子が変だ。
 堀山は土のピークだ。雪はどうしたのけえ?麓は20Cm以上の雪だべよ。
 其の上は雪がたっぷりだが、固まった古い雪なのだ。極たまに、新雪の吹き溜まりが有る。まさか、此の侭塔ヶ岳なのけえ?
 吉沢平も土の平だ。更に登ると固い旧雪で有る。う、う、新雪を踏みに来たってえのにさあ。もう諦めるべきだろう。雪雲は麓を通過したが、山には掛からなかったのだ。前にも、こんな変な経験をした事が有った。
 花立の大階段の下で、声を掛けられた。
女性「雲海ですよ」
 目を挙げると三十歳位のカップルだった。そして見事な雲海。
私「いやあ、下ばかり見て居たので」
男性「神奈川とは思えませんね、アルプスに居る見たいです」
 全くそうだった。花立に登って写真を撮ろうと思ったのが大間違い。此の時だけの景色だったのだ。続きます。

0 件のコメント: