2014年2月11日火曜日

閑話番外 その七十四





 前章“山の勝負”で、己との戦いを書かなかった。スポーツの世界では、結局己との戦いが勝負を決する様だ。登山でも、己との戦いを重視する向きも有る。
 あたしは己とは戦わない。其れは下等登山者だからだ。上級登山者は、己と戦うのだろう、きっと。高齢にしてエベレストに登った三浦雄一郎氏を見れば分かる。
 下等登山者のあたしは、もう参った、と思えば即休む。此れ以上の前進は無理だと思えば、即停滞する。目的地は無理だと思えば、即引き返す。此処はヤバイと思えば、即逃げ道を探す。
 自分の声に、とても素直に従うのだ。スケートでジャンプに失敗しても、短距離であと0、1秒を縮められなくとも、ボールを落としても、めげずにとことん頑張って、終わればシャワーを浴びて明日頑張れば良い、って世界ではない。
 ギリギリ迄頑張ってはいけない。余力を残しておかなければ、テントを張るのもおぼつかなくなる(特に積雪期)。何せ家を建て、整理して水を手に入れ、夕飯を造るのだから。はー、しんど。
其処で万一天候が急変でもすれば、とてもヤバイ。テントを広げる間も無く終焉、とは枚挙に暇の無い話だ。
 たまに、飛んでも無く危ない所を突破する話が有るが、其れは己と戦って居るのでは無く、置かれた状況からの脱出を図って居るので、結果としての望まぬサバイバルで有る。
 拙いと感じれば、とっとと退散する。情け無い姿ですなあ。でもですよ、其れが歳と技量相応って事なんで、家に無事に帰り着く秘訣なのだ。
 自分との勝負は避ける、と言う駄目野郎の話でした。へへへ、失礼しました。


0 件のコメント: