2019年7月27日土曜日

閑話 その二百九十四


 小草平からが本番だ。大昔は「ここから馬鹿尾根」と看板があった。通い慣れた路なので、次はこうでその次はこう、と状況は分かり切っている。分からずに登るより遥かに助かるのだ。
初めての人は、登りがどこ迄続くんだ、と嫌になるだろう。結局塔迄続くんだけどね。兎に角吉沢平を越えて一登りして、それから大階段を済ませなければ始まらない。
 大階段を登り始めると、横に避けて五十才位の男性がストックに縋って息をついている。その状況はとてもよーっく分かる。一気に登るにはきつい。特に蒸す日はきつい。きつくても登らなければならんのですよ。
 先は見ないで足元のみを見て登るのが、大階段登りのセオリーだ。未だかな、なぞとうっかり先を見ると、未だなのでがっかりするだけだからね。
 階段の傾斜が緩んで来ると先を見る。そこが大抵終了地点だ。大概と言う以上は違う事もあるってこってす。がっかりするですよ。
 この日は無事に登り切った。花立山荘は閉まっている。土曜だけど午後から雨の予報なので、客は少ないと見たのだろう。
 初老の女性が登って来た。続いてその旦那も登って来た。
旦那「小屋は閉まってんのか」
 曇ってるからビールではあるまい。かき氷を楽しみにしていたのだろう。花立のかき氷は夏は大人気だ。夏は、って断るのも変だけどね。決まり切ってるのに。
 水蒸気が多い癖に視界は結構利く。雲が上がり初めているが前回の雲海には程遠い。富士山は裾しか見えない。
 此処で常の如くエネルギーと水分を補給して、花立へ登り始める。前も書いたが、昔は花立山荘から花立はほんの一息だったのだが、今は立派な登りに感じる。全てがその塩梅で衰えているのですなあ。(続)

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