2019年7月10日水曜日

閑話 その二百九十一


 写真は去年の花立で見かけた鹿です。
 大階段に掛かると後を来る気配がある。あのおじさんはバテてあたしに抜かれたのだから、再度追い付くのは不可能だ。誰だ?
 花立山荘前であたしがベンチに座ったら、三十歳位の逞しい女性が登って来て一つ大きく息をつき、その侭花立へ登って行った。次のバスでの速い登山者は、その彼女だったのだ。
 此処でパンを食べてエネルギー補給をしたのだが、雲が下がって雲海の様子を示している。霞んではいるが富士山も姿を現した。花立へ登ると、山々が姿を現しつつある。これは雲海になるぞ!
 山で雲海に出会うのは珍しくも何ともない。丹沢でもだ。処があたしは塔ノ嶽では一度も雲海に会った事がない。塔でもしょっちゅう雲海にはなっているだろうけど、あたしは出会ってない。考えれば珍しい事だ。七十回から九十回は塔に立っているってえのにね。
 頂上に着いて、カメラを何で持って来なかったバカバカ、と悔いたが後の祭り。其処はこの五十五年で初めてお目に掛かる、雲海の塔ノ嶽であった。
 不動ノ峰、棚沢ノ頭、蛭ヶ岳の三点セットは悠然と雲の上である。檜洞丸は石棚山への稜線が雲の上だ。手前には同角ノ頭が、右後ろには熊笹ノ峰が頭を出している。その後ろには大室山が、左手には畦ヶ丸が姿を見せている。富士山は霞に隠れてしまった。
 東を見ると大山がほんのちょっぴり、山頂だけを尖った三角形で雲から出している。それが随分下に見える。250m近い標高差はこれ程なのかと驚く。
 と、拙くも描写してもあの景観は表現し切れませんなあ。カメラで撮ったとしても、矢張り表現できないでしょう。これは現場で見なければ分からんのです。
 下りはせっせと下って、結局四時間四十七分で大倉に到着。十一時五十三分のバスに乗って里湯へ行けたのでした。

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