2015年12月14日月曜日

達人は行く その五




 冬山の尾根筋では、幕場に良い所は狭い事が多い。六張位で一杯になる。Nは構わず這松の上に張る。テント全体がユッサユッサなのだ。もっともYは笹の上に張りたがるから、似た様なものだが、住み辛い事夥しい。
 冬山のテントから出る時(小用です)、靴を履かずにオーバーミトンに足を突っ込んで出る。いちいち靴を履いたり脱いだり、靴に雪が入ったり靴下が雪塗れになったり、そり
ゃあ面倒なもんだが、オーバーミトンなら簡単だ。冷たいのは、我慢すれば良いだけだ.
 まあ、確りした登山者って事なんだが、私が見れば、立派な達人なのだ。お前の水準が低いからだ、と言われちゃあ、はい、としか言えないのだけれどもね。
 じゃあ此れでどうだ。丹沢にはボッカ達人が居る。何度も会って居る。夏でも厳冬期でも、半ズボンにロングスパッツ姿、背負子に段ボールやプラタンクをたっぷり括って、スタスタ登って来る。
 何時でも向こうから「こんにちは」と声を掛けて来る。重荷を背負って居るのに、決してヒーヒーなぞとは言ってない。凄いのだ。
 O屋に彼の写真が有ったので、かみさんに素性を聞いた。工場勤務で、夜勤の日は昼間に荷揚げをするそうだ。休みの日は二往復、多い日は三往復するそうだ。
 うーん、私は空身だって、塔或いは花立へ、三往復は愚か二往復だって無理だ。やりたくなし、出来ない。増してやボッカなぞ、考えるだに恐ろしい。
 もう定年だと言うから(聞いた時点)、とっくに六十歳は越して居る訳だ。私と何が違うのだろう。そもそもの体の造り?鍛え方?根性?根っからのボッカ好き? 多分其の全部だろう。どうです、立派な達人でしょうが。一度お見せしたい位です。平成二十六年二月で塔ヶ岳登頂三千五百回を記録した。凄い!
 勿論、冬山で十日も頑張って居る諸君や、飛んでもない岩に挑戦する諸君も居る。私から見れば神業の範疇で有る。達人と断わるも愚かで有ろう。
 見聞した中の紹介でした。看板に偽り有り?仕方無いのです。

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