2015年7月20日月曜日

遭難今昔 その五




 前述だが、中高年は急激な気象変化に適応出来ない。或いは、徐々に風が強まり、知らぬ間にギリギリ迄体温が低下して居たのかも知れない。
 そして、決定的に天候が変わった時には、もうザックを開く事も出来なくなって居た。外に想像が出来ない。ザックの中に防寒具を残して、皆倒れるなんて。
 白馬でも立山でも、同じだ。春山と夏山の違いは有るが、状況は極めて似て居る。何で?と思うが、気象にやられた訳なのだ。装備が良くなっても、大昔と変わっては居ない。
 しかもベテラン達がやられる。海外遠征の経験者で、日本の山も知り尽くして居る。でも、駄目な時は駄目なのだ。
 雪崩に似て居る。雪崩なければ何でも無い。雪崩ても、人が居なければ何でも無い。偶々雪崩れた時に人が居ると、惨事となる。雪崩はどう仕様も無いと、前に書いた。絶対に雪崩ないと思われた所で、やられた人も居る。
 降雪後の谷を登って、雪崩の跡だらけなのに、無事に登る奴(私の様に)も居る。雪崩は人智が及ばない、と私は思って居る。全面降伏かって?一寸と違う。人智を尽くして天命を待つ、が近いだろう。
 雪崩と言えば、富士山は数十年置きに、雪崩で大量遭難をを出して居る。一度に二十人からが犠牲になる。
 此れも其の時は大騒ぎになり、関係者は散々責められるが、又忘れられて、大勢が雪面訓練やアタックで、雪の斜面に群がって居る。
 でも、雪崩ないから問題無いのだ。又大惨事が出来する迄は、だ。
 天候でも雪崩でも、大自然の営みなのだ。登山と言う行為は、大自然が相手だ。「山を征服する」、との言葉は昔はよく使われて居たが、吹飯もので有る。山は誰も征服出来ないし、誰にも征服なぞされない。性質の悪い戯言(たわごと)で有る。
 慎重に、謙虚に。え、爺じいの言う事だって? たまには爺じいも、正しい事を言うものなのだ。

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