2015年5月18日月曜日

閑話 その百五十七




 大忙しの五月の後の六月は寺ノ沢のみで、八月に飛ぶ。塩水川に車で入り、続いた雨の為増水した本谷を渡渉、桶小屋沢を登った。
 滝も無闇と増水し飛沫を浴び続ける、と有る。三段の滝が三つ連続したが、三つ目は飛沫(と言うより水)が強すぎて登れなかった。
 そして雨が降り出し、震えが来て雨具を着けた。飛沫の後は雨で有る。夏には持って来いの話だ。唯、冷たさの為、筋肉は固まったらしい。嬉しい……。
 詰め上げのガレは手強かったらしい。誰も登らない(であろう)沢には、良く有る事だ。
登山道にはやっと立った様だ。普通は其れを下る。平成元年の頃のあたしゃあ普通じゃない(詰まりそれ以前も)。廃道を下って最後は蛭だらけになっちまった。其の件は本文にも書いた。
 二十ケ所以上も喰われて、車が血だらけになったと言うあれで有る。雨の八月の本谷流域なのだから、至極当然な事なのだ。詰まり、自業自得ですなあ。
 さて、お盆の休み。南アルプスに行った。十一日新幹線で静岡、畑薙ダムへのバスは超満員で座れず。キスリングに腰掛けていた。ま、腰掛けていただけ増しだ。立ちっぱなしの人も多かったのだから。
 併し、三時間四十分のバスは長い。うんざりしてもお釣りが来る。何が悲しくてそんな思いを、皆さんなさるのだろう。
 其の日のうちに横窪沢小屋迄登っている。若者よ(四十なんだけどね)! サウナの様だったと有る。当時は耐えられたのだ。テントを張ってから、小屋番の爺さんからビールを買ったと書いて有る。六百円は安い、と感動している。担ぎ上げるんだもんねえ。
 「夜中目覚めて小便に出ると、谷合の為鼻をつままれても分からね闇、瀬音のみ高い」と書いて有る。そうだった、横に小さな流れが有るのだ。(続)

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