2015年5月12日火曜日

閑話 その百五十六




 前章の続きのヒネゴ沢。詰め上げは高松山だ。ハイカーがどんどん登って来る。其処に泥だらけでズタズタの男が居る訳だ。おいおい、怪しい奴と思われるぞ。
 下りも変な事をしてる。ビリ堂から伐採地を西に向かい、途中から強引に林道に下って暫く歩き、また藪に飛び込んで滝沢に沿って下った、と有る。
 うーん、こりゃ駄目だ。殆ど病気の人間しか思いつかないルートだ。兎に角ズボンもシャツも、ビリビリになった記憶は有る。
 又5月、此れで5月四回目の山だ。Yと車でユーシンに入った。当時は車で入れたのだ。今じゃあユーシンは遠いとこになっちまった。
 単独行者二人を拾った、と有る。思い出した、二十代の娘さんと五十位の男性だ。なっがーい林道だ、「ユーシン迄乗りますか」と声を掛けるべきだとあたしは思っている。現に二人とも喜んでくれた。
 我々は金山谷ノ頭への廃道を行った。其の侭蛭へ登って泊まった。三十人の宿泊者で一杯だったそうだ。翌日は塔へ行き、鍋割を回ってからスズタケを漕いで尾根通しに下り、林道に降りてユーシンへ戻った。
いやいや、今なら塔から真っ直ぐユーシンへ下るのでやっとだろう。なにを好んで路無き尾根で苦労するんだ。詰まり、二人とも若かったってこってすなあ(遠い目)。
 六月です。又Yを連れ出して、台風が接近してるってえのに権現山の寺の沢に入った。馬鹿ですなあ。雨の沢は増水して、滝を越すのも容易ではない。凄い水量を受けなけりゃならない。結局尾根に逃げたと言うお粗末。
 此の時全身に水を浴び、煙草が死んだ話は本文に書いた。Yの予備の煙草を貰って、雨を避け乍ら火を点けて吸ったのは、鮮明に覚えている。下らない事程、覚えてるもんなんですね。(続)

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