2015年4月10日金曜日

休題 その百四十四




 腹膜炎の手術と其のショック症状の為に、十歳は老けて退院した。大体からして体の熱を生み出す能力が、著しく低下した。
 やっと我が家の布団に寝ても、寒くて震えが走る。何時までも布団が温まらない。我慢にも限界が有る、駄目だこりゃあ。
 結局毎晩湯たんぽを抱いて寝る羽目となった。冷えた布団を温める体温が無いのだから、致し方ない。結構情けない話では有る。
 一月末の退院だから、未だ未だ寒さが続く。湯たんぽで腕を温め、腹を温め、胸を温めてから、やっと眠れた。不思議と足は寒くないのだ。普通は足が冷たいだろうに。
 身体からフケの様な粉が落ちる。老人性の何たら言う症状だそうだ。妻があたしの父母の面倒を見てくれて居た頃のお馴染みだ。
 え、其の症状が出た時父母は八十だったが、あたしゃあ未だ六十七だよ、幾ら病気の所為だったって、早すぎねえだかよお(涙)。
 嘆いたって仕方ない。なっちまったもんはなっちまったもんだ。何、其のうち治らあね。直らなくたって死ぬ訳じゃなし、フケ位何だってんだ、へん。
 入院中、尿管が外れてからは尿量を測って居た。面白い事に昼間は殆ど出ない。寝ると出る。其れも一時間から一時間半おきにだ。然もたっぷり出る。寝て居る間もない塩梅だ。
 退院してからも其の症状は残った。但し、二時間から二時間半おきに緩和された。其の状態が一月続き、幸いにも今は消えた。あれは何だったのだろう。
 歩くのも遅くなった。ノロノロ歩いて居ると皆さんが追い越して行く。縦走中の様で笑うに笑えないので、笑って仕舞う。泣くよっか遥かに増しだろう。
 思いも依らずに十歳老けると、大分ショックでは有るけれど、命が有っただけ増しなのだ。其れに、又十歳戻せば良いだけさ。

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