2021年5月25日火曜日

休題 その三百六十二

 



 大分前に舩坂弘氏が自書「激闘二百三高地」で乃木将軍は名将だったと力説していると紹介した。舩坂弘氏はアンガウル島の生き残りで、三省堂の創始者である。小説家が自分の好みで乃木将軍を貶めていると。司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」の事だ。

 日露戦争は、半藤利一氏が三冊の作品を、児島襄氏が八冊の作品を書いている。それを読んでも、乃木将軍は満州総軍の作戦に従っていたと理解できる。

 児玉源太郎参謀長が旅順に乗り込んで新作戦を展開し二百三高地を陥落させたのは事実だが、それ以前の大損害は満州総軍の責任であろう。まあ、ここは山場ですから児玉源太郎を主役にしたいのも無理からないけど。

 色々詳しく事実関係を追った作品を読むと、無能だったのは満州総軍の方だったのでは、と疑問を持ってしまう。

 戦争に錯誤は付き物で、錯誤の少ない方が勝つと言われるが、敵将クロパトキンのお陰で勝てた様なものだ。

 奉天会戦でも満州総軍は現状を把握せずに無理な命令を頻発している。乃木将軍はその命令を無視して的確な作戦を実行している。児島襄氏は、クロパトキンは殿(しんがり)軍の位置に来て撤退を自ら指揮しているが、満州総軍は安全な後方を動かなかったと、多少の苦言を匂わせている。

 司馬遼太郎氏は小説を書いたので、戦記を書いた訳ではない。多分乃木将軍が嫌いだったのだろう。それにしても随分な書かれ方だと思う。明治を代表する将軍とは絶対に思いたくなかったのだと推察する。

 児玉源太郎の、位下の総軍参謀長を自ら買って出た男気は心地良いエピソードだ。だからと言って、彼を持ち上げすぎて乃木さんを貶めるのは如何なものだろうか。

 「坂の上の雲」は大好きだし名作だとも思っている。その一部分に苦言を呈しました。

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