2017年1月19日木曜日

閑話 その二百十五




 引き返して高取山へ向かって下れば、正しい路が有るのは分かって居る。それをやらずにショーカットを考えるのがあたしの悪い癖なのだが、又やっちまったぜ。
 迷ったら確実な地点に戻るべし、なぞと偉そうにのたもうのに、自分は守らないとは、山尾議員が様な奴で有る。あたし一人なら問題無い。今回は下りが苦手なKが居るのだ。
 Kの右足首は外側に傾いて固まって仕舞った。だもんで接地面積が極めて少ないので滑る。依って下りに弱いとなるが、実際にも偉く困難なのだろう。
 そんな事情を考慮しないあたしは人でなしで有る。其の人でなしは下れそうな所を探し乍ら歩く。
「此処を下れば行けそうだな」
 勿論二人は反対する。又探し乍ら行く。
「うん、此処だ、ほら、下り易そうだろう」
 植林帯だ。見た目には如何にも下り易そうなのだ。処が登りでも下りでも、植林道以外は思いの外歩き辛い。其処で仕事をしてる林業関係者の苦労が良く分かる。
 結果としてKはあたしの断固たる口調に騙された。勿論騙す気なんざ全く無いのだが、早く下る事を優先した人でなしのあたしは、Kの苦労を考慮の二番目にして居たと言う意味で、結果は騙した、となるのだ。
 良い歳なのにダメですなあ。ダメリーダーの見本みたくなっちまってたですなあ。
 で、植林に踏み込んだ。土がズルズル滑るので、Kは勿論Sも結構難渋して居る。そんな所を歩き慣れて居るのは林業の人だけだろう。あと、まれな物好きな奴。たとえばあたしが様なアホってこったね。
 Kはたまに滑って、たまに転ぶ。Sがフォローして居る。枝に引っ掛かって傷を負った。ーファリン服用の為、出血は結構有る。でもズボンは破れて無い。確りした用具大したものなのだ。続きます。

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