「オッペンハイマー」日本では当たらなかった様だが、アカデミー賞七部門受賞、三時間十分の大作だ。遅まき乍ら昨日渋谷へ見に行った。単館映画館に覚えがある。妻と「踊るマハラジャ」を見た館だった。あの時はほぼ満席だったが昨日は五人のみ。日本では受けないんですなあ。
原爆の父が主人公となれば、日本人は心穏やかではないのだろう。加えてクリストファー・ノーラン監督なので、過去未来がごちゃごちゃに展開される。広島長崎の悲惨さは主人公の心象としか表されない。多くの日本人がそっぽを向くのも無理はない。
それは別にすると、三時間緊張感を持たされ続けた。クリストファー・ノーランは偉い力量だ。心情を表すに効果音(音楽ではない)を以ってする。その音量迫力が半端ない。これは映画館でなければ感じられっこない。
初っ端からプロメテウスの話だ。ゼウスから火を盗み、人間にくれて永遠の罰を受ける。オッペンハイマーは、人類を焼き殺す火を盗んだ訳だ。尤も本人は広島長崎に原爆が投下された事を知って、水爆開発に疑問を持つ。盗んだ火の恐ろしさに気付いたのだろう。
マッカーシーの”赤狩り”の対象となっての査問会と、オッペンハイマーをその査問会に掛けたストローズの商務大臣適否審問会が本筋に絡まって前後関係なく現れる。さっき書いたあれだ。
あたしに取って救いは、ボーアやアインシュタインやハイゼンベルグと、多少は馴染みがある人が出て来る事だ。他にもノーベル賞学者ががちゃがちゃ出て来て、誰が誰だか分からなくなっても大丈夫、筋は分かる。
核兵器の恐ろしさをじっくり描いた、と思える。その悲惨な実情とは違う、製作者の立場からの描写だ。名作と言っても良いとあたしは判断した。現代のプロメテウスを、見事に描いているので。


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