次女夫婦の薬師の話です。
十二日夜発で、十三日は室堂から一ノ越、獅子岳、ザラ峠を越えて五色ヶ原で幕営。こ
れは天気は良いし、まあまあの調子で行けただろう。処が次女は「一番疲れた」なぞと言う。ほぼ3000mから歩き出したので、体の準備が整っていなかったと。そりゃそうでしょう。でも、本当に疲れたのは翌日だろう。
暗いうちに出発して、越中沢岳、スゴ乗越、北薬師岳、薬師岳と越えて薬師峠迄歩いたのだ。今の地図で約十二時間である。テントを担いでじゃ相当ハードだ。余計な説明だろうが”今の地図では”と書いたのは、中高年が増えた為、昔の地図よりコースタイムが多目に取られているからだ。昔の地図なら十時間位だろうか。
あたしは逆コースだが、薬師岳山荘に泊まったと思われる。薬師岳を越えてから人に会った覚えがない。忘れただけだろうがねw 薬師岳山荘から一の越迄十五時間! 昔の地図なら十二時間だろうか。何たって三十代だったもんねえ、しかも小屋泊まりだから歩けたのだろう。ザラ峠で休んだ時、未だ先があるなと溜息をついた覚えがある。あたし一人だけの乗越だった。
次女夫婦はその長い稜線を、テントを担いでひたすら行った訳だ。目標はピークに立つと見える大きな大きな薬師岳だ。未だあんなに遠いのか、と焦った事だろう。
やっと近付いて薬師の登りになって、北薬師岳に立った時からガスだったそうだ。目標寸前にしてガス。あたしはそれこそ何度も何度も経験したが、次女は初めてだったかな。気の毒ではあるが、それが登山のリアルだ。そういう経験もしなくちゃね。
尤も次女夫婦にはそれ程残念に思う余裕はなかったかも知れない。ガスの薬師岳に立てただけで幸せ。だって、あと少しで幕営地だ。
無事に長丁場を歩けて何よりでした。




